オフィスでの片づけ。 働きやすく効率の良い整理整頓術とは
オフィスの片付けが働きやすさをアップすると言っても過言ではありません。厚生労働省が取り組んでいる「転倒災害プロジェクト(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/information/tentou1501.html)」がありますが、転倒災害防止対策のポイントとして一番最初に挙げているのが「4S(整理・整頓・清掃・清潔)」です。製造業などには標語のひとつとして「3S・4S・5S」として掲げているところも多いですね。3Sは「整理・整頓・清掃」、5Sは4Sに「しつけ」が加わったものです。ローマ字頭文字を用いて名づけられ、働きやすく効率のよいオフィスづくりに効果を生み出します。
「そうじ、清潔、しつけ」の前に「整理整頓」がくる理由
おかあさんが「勉強しなさい!」「あいさつしなさい!」「ちゃんとしなさい!」と頭ごなしに叱っても、子どもはなかなか動いてくれません。それは、子どもが「なぜそれをしなくてはいけないのか」がわかっていないから。それは大人でも同じことです。
理由が分からない、理不尽だ、なんで自分だけ?そういうことを抱えていたら、しつけはうまくいきません。しつけは決められたルールを守るためにみんなが動き、習慣づけをすること。清潔は、整理、整頓、そうじを維持するための仕組みづくりです。そうじを行うためには、整理整頓ができていないと時間も労力も取られてしまいます。逆に整理整頓を心がけていれば、そのあともスムーズに運ぶのです。
なぜ5Sが働きやすさにつながるのか?
5Sを取り入れる職場は従業員の意識が変わります。清潔でない雑然とした職場は、士気の低下を生み出します。「誰かがやればいいや」「自分だけがやっても仕方がない」というあきらめムードも漂い、働きにくさを増大させます。5Sを取り入れ、清潔でスッキリとした職場は「率先して」「何をすべきかを自ら考える」土壌をつくります。そして自分以外の誰かが動いてくれたことに感謝の気持ちが生まれます。これは5Sが単なる片付けではなく意識改革のひとつになり、モチベーションの向上がさらに進んで働きやすさにつながるのです。
5S活動の前に
5Sはあくまで手段です。やみくもに活動を始めるのではなく「オフィス効率化のために社員が、リーダーが、社長が何を目指すのか」「どうしたいのか」という目的を定めましょう。目的を達成するための手段が5Sです。以前、ノートパソコンの盗難防止や個人情報保護の観点でクリアデスクを励行している職場に従事したことがあります。この職場、机はキレイにしていましたが、一人ひとり与えられていたロッカーはものすごいことになっている人がほとんどでした。ロッカーに突っ込んでいては、クリアデスクの意味がありません。万が一ロッカーが荒らされた場合、さすがにノートパソコンが盗難にあったらすぐわかると思うのですが、個人情報の資料が盗まれても、きっと気づかないでしょう。
そうじよりしつけより整理が先
整理整頓という言葉はよく聞きますね。でも、整理と整頓は別物です。整理は「要・不要」「使用・不使用(未使用)」をわけることです。わけるときの鉄則は「全部出し」。自分の机の中を整理するには、机の中を、キャビネットを整理するにはキャビネットの中のモノを全て出すのです。
効率の良さを目指すのに、なぜ全部出す必要があるのか?効率を考えるならば、全部出しは非効率なのでは?という声も聞かれますが、そうではありません。ケガをした時に膿は全部出したほうが、治りが早くなるのと原理は同じ。最初の痛みは伴いますが、その分あとの痛みはすっと引いていくものです。すべて出すことで、どのくらい入っていたのかが目の前でわかります。自分や職場のモノの傾向がわかります。使えない工具や壊れたまま修理もしていない資材が、たくさん出てくる職場もあります。職場のムダが如実に見えてきます。
全部出してから、わける作業をします。しかし「いる、いらない」「使う、使わない」ときっちり二分割ができるわけではありません。「今は使わないけど将来使う」「ちゃんと修理したら使う」「保管する必要がありそうな資料」いろいろな基準が生まれます。「いつまで在庫扱いになるのか?」「修理はいつするの?」「保管の基準は何年?」など、分ける際の基準を明確にすることで、今後の整理が楽になります。職場であれば、個人の机も基準を設けることでごちゃごちゃデスクから解消されます。まさに「わかるようにわける」のがポイントです。
優先順位をつけて整頓する
整頓は並べること。高さの順やアルファベット順に並べることも整頓です。「頓」の字はその場にとどまるという意味があります。モノを整えつつ留まらせるためには、出したら戻すという一連の作業を円滑に行える並べ方がスマート。よく使うものはすぐ取り出せるようにするために優先順位をつけるのです。すぐ使うものは手前、手の届くところ、あまり使わないものは奥や手の届きにくい場所に配置しましょう。
机であれば、頻繁に使うモノは机上に置いてもいいでしょう。クリアデスクが必要ならば、トレイやファイルボックスなどによく使うものばかりを入れます。出社時にトレイごと出して、帰宅時にそのまましまえる仕組みづくりができます。前述のクリアデスクの職場では、ロッカーが机と離れておりましたので、二つの袋を準備してました。毎日使うものは優先順位高めの袋に入れて机に運んでおりました。それほど使わないものはロッカーに入ったままなので、必要なときにもう一つの袋を使って取りに行きます。帰宅時も袋にざざっと入れてしまえるので、大変重宝しました。
そうじは整理整頓ができていると時間短縮になる
倉庫や資材庫に何年も手を付けたことがない段ボールや資材、たくさんありませんか?何が入っているかわからない、いつ使ったのかわからないモノが置いてある場所は無駄なスペースがとられており、掃除する気も失せます。結果、放置になっている企業さんは結構多いです。整理整頓をすることで、清掃が楽になりますし、スペースも有効に使えます。
職場によっては清掃会社が入っているところもありますよね。大変ありがたい存在です。しかし、その人たちに任せっきりになってませんか?清掃会社さんは契約している場所しか掃除してくれません。職場によっては床を掃除機で吸うだけのこともあり、机上はやすき間は埃だらけの職場も少なくないのです。あまり使わない場所は職場の人々がやる必要があるかもしれません。年末だけでなく、定期的に掃除の時間を設けてみてはいかがでしょうか。
清潔は働きやすい職場条件のひとつ
清潔と感謝は一見結びつきませんが、誰かがやってくれたら感謝する、自発的に動くことが自然にできる職場づくりができれば、従業員も笑顔になります。コミュニケーションが活発ではない職場は、清潔に保たれていないことが多いです。それは「誰かがやるだろう」「自分さえよければいいや」と従業員が他力本願になっているからです。清潔になっていると、キレイに使おうとする「意識」、保とうとする「行動」につながります。そのためには一人ひとりの心がけなしにはできませんが、それを指揮するのがリーダーの役割ですね。リーダーが率先して清潔を心がけてみましょう。そしてリーダーが感謝の気持ちを忘れないことです。
しつけはがんじがらめにすることではない
「○○してはいけない」というばかりがしつけではありません。その会社の風土をつくり、従業員全員が気持ちよく過ごせる環境づくりを構築するためのしつけです。従業員が気持ちよい環境は仕事への取組み力を高め、士気が上がり、働きやすさ向上につながります。
整理整頓はリーダーになるための要素も詰まっている
整理整頓は、単なる片付けではありません。
全部出すことは
わかるようにわかることは
使いやすく収めることは